来年1月出版予定のマシュマロ・タッチ®️の本の原稿ができました!
目次
本の出版が決まりました!
来年1月に、マシュマロ・タッチ®︎の本が中央法規出版から出版されることになりました。「根拠がわかる 看護マッサージ」の著書の東都大学教授の岡本佐智子先生と、私たち二人との共著です。マシュマロ・タッチ®︎をもっと多くの人に知ってもらうためにも、本を出したい!とずっと思っていました。その長年の夢がやっと叶って、とても嬉しいです。岡本先生の「根拠がわかる 看護マッサージ」の本は第3版に突入する大人気の本となっていますが、この本の第二弾として、出版されることとなりました。
*1 岡本佐智子:「根拠がわかる看護マッサージ」中央法規出版
触れることは当たり前になっている
今回の本は「触れること」に焦点を当てました。私たちは、小さな頃から触れることがあまりにも当たり前になっていて、触れることについて改めて考えることは、ほとんどありません。実は、触れることは私たちの気分に影響したり、人との信頼関係を築くのに深く関わっています。アロマテラピーでいい香りを嗅ぐとリラックスすることは、今や誰もが知っていることですが、触れることもアロマと同じようにリラックスすることができるのです。それだけでなく、不安や抑うつ、疲労などを和らげることが科学的にもわかってきています。
触れ方で左右される人間関係
痛いところを優しくなでてもらった時に「気持ちいい」と感じたことがありませんか。また逆に、誰かに叩かれて「痛い」と感じたり、足を踏まれて「不快だ」と感じたこともあるでしょう。優しく触れらて「気持ちいい」と感じると、触れた人と良い関係性が築かれます。ですが、「痛い」と感じてしまうと、残念ながら良い関係性は築かれません。
優しく触れられると出る幸せホルモン
マッサージなどで触れられると、脳から幸せホルモンのオキシトシンやセロトニンが分泌されることが最近、話題になっています。触れることは当たり前過ぎて「触れればどんな時でもオキシトシンが出る」と思われがちですが、実はそうではありません。オキシトシンは、優しく触れられた時に出るのです。でも優しく触れると言っても、「優しさ」は人それぞれ違います。「優しく触れるとは、気持ちを込めて触れることだ」とも言われていますが、果たして、気持ちを込めるとどんな触れ方でも気持ちよくなるのでしょうか。それでは、あんまり科学的ではないですよね。そこで、私たちは優しい触れ方とは、一体どんな触れ方なのかを10年かけて追求してきました。
優しい触れ方とは「心地よい」触れ方
その結果「優しい触れ方」というのは、脳が「心地よい」と感じる触れ方だということがわかったのです。そして、脳が心地よく感じるために大切なのが触れる時の手です。気持ちいいと感じるためには、手の使い方や圧力など、いくつかの要素があることがわかりました。そこで、私たちは脳が心地よいと感じる触れ方のコツをまとめました。それが「心地いいタッチの5原則PARTS」です。誰かに触れられた時に「気持ちいい」と感じるためには、触れる時の手の使い方がとっても大切です。私は長年の緩和ケア病棟での施術経験で、それを痛いほど経験してきました。触れ方次第で患者さんの反応は良くも悪くも変わるのです。
「気持ちいい」触れ方は才能ではなく技術
優しく触れると気持ちいいのは、脳が気持ちいいと感じる科学的な理由があるからです。マッサージやエステでは、ゴッドハンドと言われる人がいて、予約が取れないほど人気の方もいらっしゃいます。私たちが長年、触れ方を研究する中で、ゴッドハンドについても検証してきました。その結果、ゴッドハンドと呼ばれる方の手の使い方に共通した点があるようだ、ということがわかってきたのです。また、看護研究などを読み解いていくと、看護師が患者に触れる時の手の使い方が熟練者と新人では違っていて、熟練者の方が心地いいこともわかりました。ゴッドハンドは才能であることには間違いありませんが、触れ方の技術を身につけさえすれば、誰でもゴッドハンドのような触れ方ができるようになるのです。
心地よく触れることはストレスをやわらげる
今はコロナで人との接触があまりできない環境になってしまいました。ですが、今までの生活の中で、私たちは人とたくさん触れ合ってきました。元気がない友達を励ましたり、機嫌が悪くて泣いている子どもさんを撫でたり、病気で辛そうなご家族が楽になるようにと撫でたり、嬉しい時にハイタッチで喜びを分かち合ったり、そんな時に、私たちは自然に手を使って触れてきました。また、看護師や介護士は、仕事として手を使ってケアを提供しています。人に触れる時に、触れ方のコツさえ掴めれば、人とのいい関係を築くことができたり、気持ちを慰めたり、安心を提供したりできるのです。私たちは手を使って人を癒すことができます。そのためには、相手を思いやる気持ちはもちろん欠かせないことですが、脳が「心地いい」と感じる触れ方があるからこそ、その効果を発揮できます。私は、大学で看護を学びながら触れることの研究を行いました。研究では、マシュマロ・タッチ®の「心地いいタッチの5原則PARTS」を使って触れました。その結果、たった5分間、腕に触れるだけでリラックスがもたらされ、イライラや不安、抑うつ気分が和らぐという結果が出ています。
*2 見谷貴代の研究より抜粋
「触れること」の根拠が満載の本
私たちは、触れることの素晴らしさを科学的に伝えるためにこの本を書きました。今回の本では、岡本佐智子先生は、根拠に基づいた「看護マッサージ」について、前川先生はマシュマロ・タッチ®︎の開発秘話から技術理論の部分を執筆します。そして私は、今までの17年間の臨床経験から「触れるケア」の臨床での実践を具体的な事例を交えて紹介しています。先日、3人の熱のこもった原稿が出来あがってきました。120ページにも及ぶ超大作で、「触れるケア」に関する知識や情報がびっしりと詰まっています。緊急事態宣言が発令された4月の初旬は、まだ少し肌寒く、自粛生活とともに原稿書きがスタートしました。ほぼ2ヶ月間、私も前川先生も毎日引きこもって、原稿と文献とにらめっこして過ごしました。そして、ようやく原稿を書き終えたのが5月末。ふと気が付くと季節はすっかり初夏に変わっていました。触れることの素晴らしさを知ってもらいたい!その一心で書き上げた本です。
「触れること」は、誰もが使えるケアの技
きっと、コロナで入院されている患者さんに、看護を通して触れる看護師さんの手のぬくもりに救われている患者さん達はたくさんいることでしょう。また、家族と面会ができなくて孤独な環境におかれている介護施設の高齢者の方に、介護士さんたちが触れることが孤独を和らげる一助となっているでのではないでしょうか。人との触れ合いが私たちの心や体にもたらす恩恵は、はかり知れません。人に触れる機会がたくさんあるからこそ、効果的な触れ方を知らないのは、とてももったいないことです。私たちの本が、皆さんのよりよい人間関係を作り、大切な人の辛さや和らげ、安心をもたらすことのお役に少しでも立てたらと心から願っています。
これから私たちの本の先行予約を受け付ける予定です。出版に先立ち、岡本先生とのトークイベントなども企画しています。準備ができたらブログでも案内させていただきます。
*参考文献
*1 岡本佐智子:根拠がわかる看護マッサージ 1版,中央法規出版,2017.
*2 見谷貴代,小宮菜摘,築田誠,細名水生.短時間のハンドマッサージによる生理的・心理的効果の検証―実施時間の差異によるランダム化比較試験―.日本看護技術学会誌.2018, vol.
17, p. 125–130.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnas/17/0/17_125/_article/-char/ja/
文:見谷貴代