マシュマロ・タッチが、がん患者さんのつらさや痛みをやわらげるお話です。痛みをやわらげるというと、怪しい治療法に聞こえますが、ちゃんとした理由があります。今回は、マシュマロ・タッチが、がん患者さんの痛みをやわらげるエビデンスについてお話しします。
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がん患者さんが感じる痛みが、4つあるのをご存知ですか。がん患者さんは、身体的、心理的、社会的、スピリチュアルな痛みを感じています。全人的苦痛(トータルペイン)※1と呼ばれています。これらの痛みは、1つだけでなく、複雑に絡みあって現われます。
それとは別に、がんの痛みの原因※2は、3つあると言われています。それは侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛です。がんの痛みへの対処は、この3つの原因別に行われます。
がん患者さんの痛みは、3つなの、それとも4つ?、ちょっと混乱しますよね。大雑把に言うと、3つの原因は医療で治療するときの分類なんです。
例えば、がんに大きくなって、お腹を圧迫している場合は、侵害受容性疼痛になります。
大きくなったがんが神経を圧迫したり、薬の副作用でしびれが起こった場合は神経障害性疼痛になります。
検査の結果や再発の不安などは心因性疼痛になります。それぞれの原因によって、適切な治療が行われます。
本を書くとき、「4つの痛み」と「3つの原因」を両方とも書くか、それともどちらかだけにするかで、ずいぶん悩みました。
編集のYさんからも「なんで3つと4つなんですか?」と言われたし、原稿のチェックに協力していただいた方からも、同じ指摘が入りました。
4つの痛みの方が一般的なのは分かっているんです。でも、マシュマロ・タッチの効果を正しく伝えようと思ったら、「4つの痛み」と「3つの原因」の両方が必要だと思いました。
結論から言うと、マシュマロ・タッチは「心因性の疼痛」をやわらげます。
マシュマロ・タッチの効果を検証した研究※3では、不安やイライラ、抑うつ感や疲労感が軽減し、リラックスする結果が出ているからです。
不安やイライラ、抑うつ感などは、心因性の疼痛に入ります。
マシュマロ・タッチは、がん本体の痛みや がんや薬によって起こる神経の痛みには効きません。でも、心の痛みをやわらげることは出来るんです。
がんに限らず、病気の治療は長い階段をひたすら登っていくようなものです。終わりの見えないトンネルを歩くような辛さがあります。真っ暗な中、迷いながらも先に進むしか道はないんです。
マシュマロ・タッチで、がんが治ることはありません。でも、階段の踊り場で一休みするように、心の痛みやつらさをやわらげてくれます。
ご家族や親しいご友人が、病気になったら、ぜひマシュマロ・タッチを使っていただければと思います。
参考
※1 苦痛に対する閾値をあげ人生に意味を見出すための精神的ケア
※2 「がん看護セレクション がん疼痛マネジメント.」林 章敏 編. 学研メディカル秀潤社, 2012.
※3 見谷貴代ら,日本看護技術学会誌.125-130(2018)
『がんのつらさや痛みをやわらげる家族ができる12の方法』ができるまで 03
『がんのつらさや痛みをやわらげる家族ができる12の方法』ができるまで 05