高齢者の方にはどう触れるべき?よくある質問と注意点
マシュマロ・タッチの講座を受講される生徒さんから、
「高齢者の方にタッチをしたいのですが、皮膚が伸びることがあって、どのように触れたらいいのか、わかりません。」
という質問をよくいただくことがあります。このように高齢者の方に触れる際に心配することは、とても大切なことです。タッチを受ける対象の方のことを思いやっているからこその質問だと思います。
高齢者の方の身体には、加齢に伴うさまざまな変化が生じています。私は、15年ほど前から介護施設で利用者さまにタッチングをしてきました。その経験から、特にタッチをする際に気を付けることがあります。それは、皮膚の状態に注意することです。
高齢者の皮膚の特徴について
高齢者の方の皮膚は、若い人とは違ってとてもデリケートです。以下のような特徴があります。
皮膚が薄くなる
加齢により、表皮が薄くなり、皮膚が非常に傷つきやすくなります。弾力が低下する
皮膚の真皮層にあるコラーゲンやエラスチンが減少することで、弾力が失われ、真皮層も薄くなります。乾燥しやすい
皮脂の分泌が減少し、皮膚が乾燥しやすくなり、その結果、バリア機能も低下します。
これらのことを考えずに、いつもと同じ感覚でケアを行うと、気づかないうちに皮膚を傷つけてしまうことがあります。特にスキンテア(皮膚裂傷)には注意が必要です。高齢者の皮膚は少しの摩擦やズレでも簡単に裂けてしまうため、若い人に触れるのと同じ感覚で強く力を入れてしまうと、皮膚を傷つけるリスクがあります。
高齢者に触れる時のポイント
こうした高齢者の方の皮膚の状態を考慮して触れることが必要です。では、具体的にどのように触れたらいいのでしょうか?
マシュマロ・タッチは、力をかけずに、手を密着して、皮膚の表面をすべるようにしてタッチをします。講座では、まず最初にこの3つのポイントを練習していただいています。
私たちは、「えっ、こんなに軽くて本当に気持ちいいんですか?」と思うかもしれません。ですが、高齢者の方の皮膚の状態を考えれば、これぐらいソフトなタッチで十分なのです。
大切なのは、何のために触れるのか?を考えること
「介護施設やデイサービスで、高齢者の方にタッチケアをやってみたい」と思って、マシュマロ・タッチの講座を受講される方もたくさん、いらっしゃいます。
高齢者の方の力になりたい、という皆さんのお気持ちは素晴らしいと思います。
ですがその前に、何のために高齢者の方に触れるのか?なぜ、触れる必要があるのか?についてお話をしています。
高齢者へのタッチケアは、単に身体的なケアだけでなく、心理的な安心感や信頼感をもたらすことも重要です。優しく触れられることで、リラックスし、心の安らぎを得ることもできます。また、触れられることで人とのつながりを取り戻し、孤独感をやわらげることにもつながります。
高齢者へのタッチケアは、ただ単に身体に触れるのではなく、心や身体の特性を理解して、適切な技術を使うことが大切です。まずは今日、お伝えしたように、高齢者の方の皮膚の状態に気を付けて、タッチをして頂けたらと思います。
高齢者の方に起こる心身の変化を理解し、配慮してケアを行うことが、心地よさと安心感を提供するための第一歩です。
見谷貴代