『がんのつらさや痛みを和らげる家族ができる12の方法』が本になるまでのアレコレを書き綴っています。3回目は、軽いタッチとオキシトシンの関係です。
人が人に触れるエビデンスを調べていて、分かったことがあります。それは「触れ方が大切」ということです。触れるときの強さや速さによって、体への影響が変わるんです。
目次
幸せホルモンのオキシトシンは、幸せな気分にしてくれるホルモンです。オキシトシンは、人間関係の改善に働くと言われています。原稿を書くのにオキシトシンのエビデンスを調べていて、アメリカの研究で興味深いものがありました。
それは、アロマなどでよく使われているスウェディッシュ・マッサージとライトタッチ(軽く触れるタッチ)を比較した研究※です。
研究では、通常のスウェディッシュ・マッサージと圧の弱いライトタッチ(軽い圧)を比較していました。手の力加減が違うだけで、触る場所や方法は変わりません。
結果は、ライトタッチ(軽い圧)の方が、幸せホルモンのオキシトシンが増えていたんです。同じやり方でも、手の力が軽い方が、オキシトシンが増えて、ストレスで増える副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が減少しました。マッサージはアルギニン-バソプレシン(AVP)が減少していました。
この研究で、研究者たちはスウェディッシュ・マッサージの方がオキシトシンとか絶対出るよね!と、思って研究したみたいです。なのに、出たのは真逆の結果。論文の要約で、一所懸命にスウェディッシュを持ち上げてて面白かったです。
いや、ほんとに苦心の跡が見えるんですよ。本文を読んでから要約を読み直すと…😅
ちなみに米国では、アロマトリートメントはディープティッシュ・マッサージになります。筋肉など体の深い場所に届くタッチなので、Deep tissue(深部組織)に届くマッサージなんです。マシュマロ・タッチは皮膚の感覚センサーを反応させるので、ライトタッチになります。刺激が届く場所の深さが違います。
だから、スウェディッシュ・マッサージとライトタッチの比較研究で、結果が違うのは当然かなと思っています。この研究は予備研究なので、次の研究でどんな結果が出るのか楽しみです。
個人的には、他の研究から見ても、軽いタッチの方がオキシトシンを出すのに向いてるんじゃないかなと思っています。
触れることは、心を落ち着かせ、安心感を与えてくれます。昔から言われている「手当て」が、まさにそうですよね。コロナで人に触れる機会が減って、触れることの研究がここ数年、増えてきています。
がんの本で調べたエビデンスは、2023年6月~2024年2月に調査しました。今回の本と2021年に出版した「看護にいかす触れるケア』のときを比べると、触れるケアの根拠は、かなり増えていると思いました。
次回も触れることのエビデンスについて、お話したいと思います。
つづく
参考
※ J Altern Complement Med. 2010 Oct; 16(10): 1079–1088.
『がんのつらさや痛みをやわらげる家族ができる12の方法』ができるまで 02
『がんのつらさや痛みをやわらげる家族ができる12の方法』ができるまで 04