マスクがない時どうする?知っておくべき「咳エチケット」とは
咳エチケット社会的マナーです
前回は、正しい手洗いやアルコール消毒の方法をお話しました。手洗いやアルコール消毒は自分に感染しないために必要な方法です。今回は、人に移さないための咳エチケットについてお話しします。咳エチケットはウィルスや細菌を人に移さないための方法です。他人に迷惑をかけない社会的なマナーなので「エチケット」と呼ばれています。あなたのちょっとした気遣いで感染症の拡大を防ぐことができます。
目次
ウイルスはどこまで飛ぶの?
咳やくしゃみをすると、大量の細菌やウイルスが口や鼻から飛び出します。ウイルスたっぷりの唾や鼻水がどれくらい飛ぶかというと、厚生労働省のYouTube動画でご覧になれます。
咳やくしゃみをした人から2m以上、離れていれば、感染リスクが低くなるそうです。咳やくしゃみをした人がマスクをしていれば、かなりリスクが低くなります。この動画を見ると、本当にマスクは人に移さないためのものなんだと思いますね。だけど2mってけっこう距離があるから、満員電車の中で、避けるのは無理だわ~。
マスクで予防はちょっと無理?
基本的にマスクは人に移さないために使うものと言われています。ウィルスはとっても小さいので、マスクをしていても線維の間をすり抜けてしまいます。ウィルスの大きさはスギ花粉より小さいPM2.5の10~20分の1くらいの大きさだから、普通のマスクなんて軽々くぐり抜けちゃいます。予防目的で使う方もおられるみたいですが、エビデンスを調べると、あんまり直接的に防ぐ効果はないみたいですね。でも、つけないよりはつけた方がいいという意見もあります。人の唾液や鼻水などに含まれたウィスルが飛んできた場合は、大きな塊で飛んでくるので、その塊が直接、口に入らないように防止はできるのと、マスクを付けていると顔を直接、触らないようになるので間接的な予防には効果があるとも言われています。
今日も電車の中に10人くらいマスクをしている人が車両の中にいましたが、ちゃんと付けている人はたった一人でした。マスクは、自分に合ったサイズでないと隙間ができてウィルスが侵入します。口は覆っても鼻を出していたり、頬のところが浮いていたり、鼻の横に隙間が空いたりするとウィルスの侵入します。息苦しいから鼻を出したりする気持ちはわかりますが、意味のないマスクの付け方の典型なんです。マスクは顔に隙間なく付けないと意味がないので、自分の顔にあった鼻から顎までを覆えるサイズのマスクを、鼻の横や頬などに隙間がでないようにしっかり密着させて使ってください。
ところで皆さん、N95という医療用のマスクをご存知ですか。私は前に試したことがありますが、きちんと装着するのも難しいし、息苦しくて1時間も耐えられませんでした。あれを付け続けられる新型コロナウィルスの治療に当たっているお医者さん方ってスゴイです!
マスクをつけた方がいい人
マスクは人に移さないためのものです。なので調子が悪くて咳や鼻水が出ているような人は、家族や友だち、同僚など周りの人に移さないようにマスクをしましょう。
マスクの色でモテ度が変わる!
マスク関係の論文を探していて、面白い論文を見つけたので、ついでにご紹介します。最近、カラーマスクを見かけるようになりましたが、そのマスクの色の研究した人がいるんです。白いマスクと黒いマスクで印象や顔の魅力を測定した結果、黒マスクは印象が悪くて、魅力が下がるみたいです。女性は白よりピンクの方が魅力的に見えるというのもあって、付けるマスクの色によってモテ度が変わるのが面白かったです。
咳エチケットは3つ
ちょっと話がずれたので、感染予防のお話に戻りますね。
咳エチケットは①マスクをする②ティッシュを使う③腕で覆うの3つです。下の図は厚生労働省のHPで紹介されている咳エチケットです。
出展:厚生労働省ホームページ「咳エチケット」より
マスクがないときの咳エチケット
やっとタイトルを回収するところまでたどり着けました。マスクがないときは、どうしたらいいのでしょうか。絶対にしないで欲しいのが、手で鼻や口を覆う方法です。上記の厚生労働省の咳エチケットでも、何もしないのと同じく、手で覆うのも咳エチケット違反です。手で覆うとウィルスや細菌が手にべったり付いてしまうからです。
じゃあ、どうしたらいいのでしょうか。私はとっさの時には「腕で口や鼻を覆う」方法をおすすめします。ティッシュで口を覆う方法もいいのですが、電車の中などではティシュを取り出せないことも多いので、素早さで腕をおすすめします。監修ドクターに「何で、腕なんですか?」と聞いたら「腕の内側はどこにもつかんやろ。手と違ってベタベタ触って菌を拡げることないからな。CDC(アメリカ疾病対策センター)じゃ当たり前のやり方」だそうです。なるほどと思いました。
でもね、これって女性にはオススメとは言い難いんです。腕で覆うと化粧が服に付いちゃうんですよ~。白いブラウスに口紅が付いたときは、本当に大変でした。じゃあ、ティッシュを使えばいいのかというと、捨てるところがない電車の中とかで困るんです。ティッシュを捨てる用に小さなビニール袋を持ち歩かなきゃならないので、とっても面倒だけどマナーだから仕方がないと諦めています。ティッシュの場合は、必ずあとで手を洗ってくださいね。ティッシュを通してウィルスが手についているかもしれないからです。手洗いの方法は前回のブログを参考にしてください。
マスクの置き方と捨て方
前に監修ドクターに、脱いだマスクの置き方を注意されたことがあります。マスクを一時的に外すときは、口や鼻に当たる部分に空気中に飛散しているウィルスや細菌が付かないように、内側が下になるように置け、だそうです。捨てるときも表側はウィルスが付いている可能性があるので、部屋のゴミ箱にそのまま捨てるのではなく、ビニール袋などに入れてウィルスが飛び散らないようにした方がいいそうです。当然、捨てた後は手洗いは必須。面倒ですが、感染予防にはそれくらいの注意深さが必要になるんです。皆さん、マスクは捨てるときも気をつけてくださいね。
おまけ:進撃の咳エチケット
下記のポスターは厚生労働省が2年前に咳エチケットの普及のために作ったものです。
3つの咳エチケットが載っています。
私はこのポスターを保健所で見たときに「なぜ、進撃!?」と思わず声に上げてしまいました。厚生労働省のホームページには『今回、学生や社会人など幅広い層に認知されている『進撃の巨人』とコラボレーションを企画し、咳エチケットの方法を紹介する啓発ツールを作成しました。』とありますが、省内にファンの方がいたんでしょうねえ。ちなみにこのポスターは啓発目的以外での無断使用は禁止されています。
《参考》
- 厚生労働省 MHLWchannel
- 「飛沫の飛ぶ距離は? 対面調理時の衛生面への影響は?」日本医事新報社HP
- 「院内感染とは ~その基本概念と対策~」
- 「日常的なマスク着用による感染予防効果について」
- 「黒色の衛生マスクの着用が印象と魅力の知覚に及ぼす影響」
- 厚生労働省HP 咳エチケット
文:前川 知子