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眠れない、集中できない、気分が落ち込む、自粛解除後が危険な「コロナうつ」の対処法とは

2020/06/20 更新日:2021/12/31

「コロナうつ」から「コロナ明けうつ」へ

5月末に緊急事態宣言も解除されて、社会活動も少しずつ戻ってきています。コロナの感染を広げないためにステイホームを余儀なくされ、外出を制限された我慢と不安の日々から、私たちはやっと解放されました。これからは通勤もできれば、学校にも行けるし、友達にも会えるのです。当然、嬉しいことのはずなんですが、「あれ?なんだかしんどいな」、と感じている人も多いのではないでしょうか。自粛が明けた今、注意が必要なのは「コロナ明けうつ」だと言われています。

急増する「心の相談」

「大阪府こころの健康総合センター」によると、コロナに関連した心の不調の相談件数は、3月が18件だったのが4月は130件になり、5月には212件に急増しているそうです。(ミント!【特集】「コロナうつ」自粛解除から日常へ戻る今が危険‘’心の不調‘’相談件数も増加)自粛中のコロナうつについては前にもブログで書きましたが、コロナで突然、私たちの生活はガラリと変わってしまいました。そのストレスから、心に不調をきたしても仕方ない状況といえるでしょう。今は自粛生活も終わり、感染者の数も減ってきているし、本当は「もう大丈夫」なはずなんですが、実はそうではないのです。

自粛中はストレスでいっぱい

私たちは、もう何ヶ月もの間「コロナにかかったらどうしよう?」「仕事がなくなったらどうしよう?」とずっと不安を抱えてきました。また「友達と遊びたいけど、今は我慢。」「ネットで買い物もしたいけど、収入が減るかもしれないからやめとこう。」とたくさん我慢もしてきました。家にずっといたし、そんなにストレスなんて感じていないはず、と思ったら大間違い。実は知らないうちに、たくさんのストレスを抱えていたのです。

ストレスと闘う応援団、交感神経

ストレスと深い関係にあるのが、自律神経です。自律神経には2種類あります。一つは、体が活発な時や緊張状態の時に働く交感神経、そして、もう一つが休養やリラックスの時に働く副交感神経です。ストレスを感じるとアドレナリンというホルモンが脳から出て、上がってくるのが交感神経です。交感神経が高くなると心臓がドキドキして脈が早くなり、呼吸も早くなり、私たちの体は戦う態勢に入ります。まさに交感神経は「ストレスなんかに負けないで、頑張って」と応援してくれる応援団です。そのおかげで、私たちはストレスと戦うことができるのです。

コロナが明けたらストレスでいっぱい

自粛中は、たくさんのストレスと戦うのに交感神経が高い状態がずっと続いていました。そして、長い戦いにクタクタに疲れてしまったのです。そこに今、さらなるストレスになっているのが環境の変化です。私たちは、いつの間にか長い自粛生活に慣れてしまいました。ところが、緊急事態宣言が明けて、再び生活を変えないといけなくなったのです。気持ちに余裕があれば、元の生活に戻るのもなんてことないのですが、自粛中のストレスで私たちの体は疲れ果てています。そのため、「環境が変わる」という新しいストレスに、もはやついていけなくなっているのです。

ストレスを感じたら?

• 仕事に行こうと思っても朝すっきり起きられない

• なんだかやる気が出ない

• 明日の朝早いのに夜、なかなか眠れない

ということはありませんか?それは、もしかしたらそれは、「コロナ明けストレス」かもしれません。心の疲れは、はっきりした症状が出ないので、見過ごされがち。体がSOSのサインを出していないかどうか、早めに気付くことが大切です。SOSのサインをチェックする方法は今、色々と紹介されています。

《大阪府が発行するストレスチェックのリーフレットです》

頑張らないといけないのに、やる気がでない

そんな時は、どうしたらいいのでしょうか?一番大切なのは、交感神経から副交感神経のスイッチに切り替えることです。つまり、休息をとったり、リラックスすることです。今まで休んできたのに、これ以上休むなんて、と思わわないでくてださい。「今まで頑張ったんだから少しは休もう」と思ってくださいね。

まずは、生活リズムを整えること

そして一番のおすすめは、生活のリズムを整えることです。それには次の3つがあります。

その1:しっかり睡眠をとる

睡眠時間は長ければいいというわけではありません。カリフォルニア大学での110万人を対象にした研究で、睡眠時間が6.5~7.4時間の人の死亡率は、それよりも短い人や長い人よりも低いことがわかりました。深い眠りが得られるのは、寝入ってから約3時間の「ノンレム睡眠」という睡眠の間です。深い眠りの時は、脳も体も休ませることができます。最初の3時間で深い眠りに入ることが質の良い睡眠のコツになります。

その2:軽い散歩をする

ウォーキングは、うつ予防に効果的なことがわかっています。特に朝日を浴びながらの朝散歩は、セロトニン分泌を促してくれるのでおすすめです。

スタンフォード大学のウッズ環境研究所の研究では、自然の豊かな環境でウォーキングをしてもらうグループと、交通量の多い街道をウォーキングしてもらうグループとでは、自然の豊かな環境でウォーキングをしたグループの方がうつ傾向が軽減したそうです。

その3:毎日、朝日を浴びる

体内リズムを整えるためにも朝日を浴びましょう。朝の光が体内時計をリセットしてくれます。質の良い睡眠のためには、セロトニンとメラトニンという2つの脳内ホルモンが必要です。朝日を浴びると、セロトニンがたくさん分泌されます。セロトニンは、心を穏やかにするホルモンで、副交感神経から交感神経に切り替えて活動的にしてくれます。メラトニンは、眠気をもたらすホルモンで、夜暗くなると分泌が増えます。メラトニンはセロトニンから作られますが、朝日を浴びてから15時間後に分泌されます。

日本うつ病学会は、「新型コロナウイルス感染症の世界的大流行下における、 こころの健康維持のコツ」として、体内時計を整えることで気分を安定させるコツを紹介しています。

• 毎日決まって行う日課を作る

• 毎日、同じ時間に起きる

• 毎日、朝の光を浴びる

• 外に出られなくても、少なくても2時間は窓際で過ごし、 日の光を浴びながら、心を落ち着ける

• 毎日行う活動はや る時間を決めて、毎日、同じ時間に行う

• 毎日、できれば同じ時間帯に運動する

• 毎日、同じ時間に食事する

• 毎日、 同じ時刻にコミュニケーションの時間をとる

などなどです。

こちらは、WHOのストレス対処のためのポスターです。

自粛明け、やることもいっぱいありますが、頑張りすぎず、少しずつ日常を取り戻していきましょう。

*参考サイト

• 大阪府:新型コロナウィルス感染症に関する心のケアについて

• 一般社団法人日本産業カウンセラー協会:新型コロナウイルスによる不安やストレスなどの心の問題に対処するために

• 厚生労働省「こころの耳」:新型コロナウィウルス感染症対策

• WHO:COVID-19流行によるスト レスへの対処

• 日本うつ病学会:公式サイト

• オムロン:睡眠が健康に与える影響–睡眠は「時間」も大事だが「質のよさ」がもっと重要!

• 大塚製薬:睡眠リズムラボ

文:見谷貴代