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自分は大丈夫!と思っている人に読んでもらいたい「私の感染症体験」

2020/03/29 更新日:2021/12/31

自分だけは大丈夫と思っても感染症からは逃げられない

新型コロナが首都圏で感染爆発の危機にさらされています。「自分は大丈夫」と思っている方も多いのではないでしょうか。でも、感染症で「大丈夫」ということは、ありません!感染症で隔離される状況は本当に深刻です。私も若い頃は感染症を甘く見ていました。その結果、感染症にかかって病院に3ヶ月間、隔離された経験があるのです。私は感染症にかかったために、多くの人に迷惑をかけてしまいました。コロナではないのですが、今日は、私の若い時の失敗談を、好きな志村けんさんもかかったと聞いて、少しでも自粛のお役に立てたらと思ってブログに書かせていただきます。

当時、私がかかったのは「腸チフス」という感染症でした。腸チフスは、高熱が続くのが特徴で、食欲不振や倦怠感、そしてバラ疹という胸部の発疹が出たり、ひどくなると意識障害が起こることもあります。致死率は10%と言われていて、今、騒がれている新型コロナよりも高くなっています。大学在学中の春休みを利用してアジア旅行をした時に、私は腸チフスにかかりました。

旅行中に親しくなった現地の人の家に呼ばれて、みんなで一緒に食事を作ったり、伝統舞踊を習ったりして、毎日、それはとても楽しく過ごしていました。食事は右手で食べて、トイレは左手ですませていました。現地ではそれが普通だったんです。

そんな状態でしたから、現地にいる頃から一緒に行った友達も含めて、お腹をこわしていました。でも「みんな1回はお腹をこわすよ。」と言われていたので、「アジア旅行の通過儀礼だろう」ぐらいにしか考えていませんでした。そんなことよりも旅行の楽しさの方が勝ってしまっていたのです。

日本と比べて衛生状態も悪かったし、それが普通だったので、手洗いも簡単にすませていました。もしも、当時の私が手洗いをちゃんと済ませていたなら、腸チフスにはかからなかったかも知れません。

今、渋谷に遊びに行っている若い人たちがテレビでとりあげられていますが、当時の私と同じ感覚なんだと思います。遊びに行くくらい大したことないでしょ、手洗いはこれくらいでいいんじゃない?と5秒ぐらいで済ませてしまう。私には移るはすがない、自分だけは大丈夫、と思ってしまう気持ちもわからなくはないのです。まさに20歳の頃の私のそうでしたから…

その結果、私に訪れたのは3ヶ月の隔離生活でした。独房のような部屋に3ヶ月も閉じ込められる羽目になってしまったのです。

生死の狭間をさまよった3日間

楽しいアジア旅行から戻った2日後、急に38度くらいの高熱が続きました。内科医をしている父に電話で相談したら「すぐに病院に行きなさい!」と強く言われ、当時の感染症指定機関(その当時は隔離病棟と読んでいたと思います)を探してくれました。病院に行き、診察を受けると「今日は家に帰らないでください。」と先生から言われ、急遽、入院することになったんです。

その日の晩に40度以上に熱が上がり、ベッドから起き上がれなくなってしまいました。トイレにも行けず、下痢が止まらなくて、おむつを当ててもらっていました。看護師さんがおむつを替えてくれる時に、真っ赤な下痢が出ているのを見てから意識が遠のいていきました。次に目が覚めた時には、目の前に母がいて、泣きそうな顔で「よかった!!」と言われたのです。一体何が起きたのか?なんで母がいるのかわからなくて戸惑いましたが、私は3日間、ずっと意識を失っていて、まさに生きるか死ぬかの瀬戸際だったそうです。そこから3ヶ月の隔離生活が始りました。

隔離病棟での3ヶ月の日々

隔離病棟での3ヶ月間は、誰にも会えないし、部屋から一歩も出られませんでした。もちろん、お風呂にも入れません。入院中に二度、検査を受けて完治しているかの確認が取れないと退院できません。最初の頃は、点滴が続いて、食べたいものも食べられない。心配した下宿先の大家さんが防護服を着て、私の好きな巻寿司を持ってきてくれたのですが、もちろん、食べられるはずがなく、辛い思いをしました。しんどくて、辛くて、何にもすることがなくて、ベッドで仰向けになりながら、天井の壁紙の模様の穴を数えるしかありませんでした。

後から聞いたのですが、私が隔離されている間に、私が立ち寄った所を全て保健所が消毒したそうです。本当に周りのみんなに迷惑をかけてしまいました。今、新型コロナで新たな感染者が出るたびに、濃厚接触者を探すことが行われていますが、それと同じことが当時の私の周りでも起こっていたのです。

 

 

感染症に関係ない人はいない

今、健康な人は「自分には関係ない」「自分だけは大丈夫」と思っているかも知れません。当時の私もそう思っていました。こんなの大したことない、すぐに治るわ、と楽観的に思っていました。その結果、私は自分の命を危険に晒すだけでなく、多くの人に迷惑をかけて、なおかつ感染リスクを負わせてしまったのです。今、思い返すと本当にやってはいけないことをしていたと思います。

今回の新型コロナも私には関係ない、と思っている人の気持ちは、当時の私と一緒です。でもそれが多くの人を、そして皆さんん自身を危険に晒していると思ってください。

後悔しないために…

これは今から30年前の私が20歳の頃の感染症体験です。この経験は、今も私に重くのしかかっています。新型コロナは、若い人でも一気に重症化することがある、と言われています。決して人ごとではありません。今も、生きるか死ぬかの瀬戸際で頑張っている人が世界中にいます。手洗いや外出の自粛は、自分を守るだけでなく、周りの人の命も守ることなんです。

新型コロナが収まるまで、どうかほんの少し我慢してください。お友達は逃げません。カフェだっていつでも行けます。皆さんのちょっとした気遣いが、感染症の蔓延を防いでくれるのです。

3ヶ月の隔離生活から解放され、退院したのは初夏でした。目の前には新緑が広がっていて、「こんなに美しい世界があるのか!」と涙が溢れ出てきました。キラキラ眩しい世界を見て、心から生きててよかったと心から思いました。そして「命を大切に生きよう!」と心に誓ったのです。

今回のブログは、看護師としての私ではなく、感染症で生死を彷徨った1人の体験者としてお話しさせていただきました。みなさん、新型コロナを防ぐために、手洗いや外出自粛など、できることから始めていきませんか?

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