NHKのガッテンで放映されたハッピーホルモンって何?
触れると出る、ハッピーホルモンとは?
昨日のNHKのガッテンのテーマは「ハッピーホルモンで不安ストレス撃退!」でした。4年前に放送された内容と重なっているところもありましたが、コロナストレス対策のために再編されたものでした。マシュマロ・タッチ®︎の講座でもお伝えしてきたタッチの効果の一つ、それがオキシトシンです。触れると、脳から「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが出るといわれています。マシュマロ・タッチ®︎の技術監修をしてくださっているタッチング研究の第一人者、桜美林大学の山口創先生もたくさんの著書の中でオキシトシンの大切さを述べられています。
愛と信頼に関わるオキシトシン
オキシトシンは、愛情や信頼感に関わる脳内ホルモンで、オキシトシンが出ていると幸せな気持ちになれて、人といい関係が築けるのです。最近の研究では、触れられた人だけでなく、触れた人にもオキシトシンが出ることがわかっています。昨年の冬に「7秒ハグ」のタイトルで「7秒間ハグして親しい人との絆を深めましょう」というCMが流行りましたが、これもオキシトシンの効果を狙ったものだったんですよ。私たちは、生まれた時から人と触れ合うことで、脳からオキシトシンを出して、気持ちを安定させたり、人との絆を深めて信頼関係を築いてきました。
コロナによって蝕まれる心の健康
ところが!私たちは、突然、新型コロナ感染症を広めないため、人との距離をとらないとならなくなりました。『社会的距離』というものです。友達と手を繋いだり、好きな人とハグしたり、ストレス解消にマッサージを受けるなんてもっての他!という世の中になってしまったんです。今まで当たり前にやっていたことが、コロナによってできなくなってしまったのです。あまりにも突然に、今までの常識が覆されてしまいました。
触れ合うことで信頼が生まれる
私たち人は、人と触れ合うことで、安心したり、リラックスしたり、信頼できる人間関係を築いていました。それが、人と距離を取るためにテレワークになって、外出を自粛する、そんな今までとは全く違うライフスタイルによって、もたらされるのが「孤立」です。そこに「感染するかも」「仕事が無くなるかも」といった不安や恐怖、緊張が加われば、私たちの心の健康が保てなくなっても当然なのです。今、私たちは、ものすごいストレスフルな毎日を過ごしています。それをコロナ疲れやコロナうつ、という風に言われていますが、コロナによってメンタルヘルスによくない影響が出ることが危惧されています。イギリスの精神医学専門誌THE LANCET PSYCHIATRYTRYでも新型コロナウィルスの精神面への影響についての論文が発表されました(*1)。日本赤十字社もこんな動画を作っています。「ウィルスの次にやってくるもの」
接触しない生活で、何が起きるかのか?
日本心理学会は、新型コロナウイルスによって受けるストレスについて、ホームページに次のように掲載しています。
何が起きるか
新型コロナウイルスに感染したり,感染者に接触したり,集団感染が広がっている地域であるなどの事情で在宅を求められた人々は,ウイルスの潜伏期間と推定される少なくとも2週間は,通常の生活から切り離される可能性が高いです。
こうした時期によく見られるストレスの原因には,意味のある活動・感覚的な刺激・社会的な関わりなどの低下,働けないことによる経済的負担,普段ならできるストレス対処方略(ジムに行く,宗教的行事に参加するなど)がとれないこと,などがあります。これまでの心理学研究によると,こうした隔離状況下では,次のようなことが起こります。
恐怖と不安
自分自身や家族が新型コロナウイルスに感染したり,他者に感染を広げたりすることに,不安を感じ,心配になるでしょう。また,食料や身の回りのものが入手できるだろうか,仕事を休むとどうなるだろうか,家族をきちんと世話できるだろうか,と懸念するのも当たり前のことです。よく眠れなくなったり,日々やるべきことをきちんとできなくなる人も出てきます。
抑うつと倦怠
仕事などの,あなたにとって意味のある活動が中断すると,あなたの日常のルーティンが妨害され,悲しみや気分の落ち込みを感じることがあります。家で過ごす時間が長くなると,倦怠や孤独を感じることもあります。
怒り,フラストレーションやイライラ
隔離によって主体性や自由が失われると,人はしばしばフラストレーションを感じます。また,検疫や隔離命令を出した人々に怒りや憤りを感じることもあります。あなたをウイルスにさらすことになった無神経な誰かに対して,怒りや憤りを感じるかもしれません。
スティグマ化
あなたが新型コロナウイルスに感染していたり,感染者と接触したことがあれば,接触感染を恐れる他の人たちから,自分が汚いもののように扱われていると感じるかもしれません。
社会的弱者
特に,もともとメンタルヘルスの問題を抱えている人や,新型コロナウイルスへの対応に関わっている医療従事者は,隔離状況から精神的苦痛を受けやすいでしょう。
特別な食事,医薬品,介護者の支援,その他のサポートを必要とする障がい者も,必要なケアを受けることがより困難になるため,パンデミックの際に心理的な問題に直面するリスクがあります。
新型コロナウイルスによって、これだけのストレスが起きると言われているのです。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のホームページでもコロナから心を守る方法について紹介しています。国内では、日本赤十字社や先ほどの日本心理学会のホームページでもストレスの対処方法が紹介されています。ぜひ、参考にされてみてください。ストレス対策については、改めてブログでアップしたいと思います。
社会的な孤立がうつを招く
今、来年1月に中央法規出版から出版予定のマシュマロ・タッチ®︎の本を書くため、色んな論文を読んでいます。最近読んだ高齢者を対象にした研究では、社会的に孤立することで要介護状態の発生、死亡率、うつ、さらには自殺や認知症の発症が増加することがわかっています(※2)
感染を広げないために家にいること、それは、今、一番大切なことであるのは間違いありません!でも、孤立や不安を抱えたストレスフルな状態で家にいるのは、私たちの心の健康には好ましいものではありません。そんな今だからこそ、オキシトシンの出番です。オキシトシンには、不安や緊張を感じて興奮した扁桃体を鎮める働きがあると番組で解説していました。不安を和らげて、人との絆を築くオキシトシンが私たちには今、必要なホルモンなのです。
抱き枕でハッピーホルモンがアップする!?
でも、ハッピーホルモンのオキシトシンって人に触れないと出ないんじゃないの?と思っているかもしれません。いえいえ、大丈夫!人に触れなくても出る方法があったんです。NHKのガッテン!でも紹介されていたのが、抱き枕。例えば、今、会えない実家のお母さんや離れて暮らすお孫さんなどと電話をする時、枕などが肌に触れているとオキシトシンが出るそうです。このお話は、以前に山口創先生もテレビでご紹介されていました。その時はギャル曽根さんが、抱き枕を抱えて子供さんに電話をしたら、電話をする前よりもオキシトシンが30%もアップしたというお話でした。
抱き枕型ロボット『ハグビー®︎』でオキシトシン
ガッテンで紹介されたのが、ハグビー®︎という人の上半身の形をした抱き枕型ロボットです。ハグビー®︎の頭の部分にスマホが入れられるようになっていて、ハグビーを抱っこしながら電話ができるようになっています。このロボットを開発した国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の住岡英信先生たちの研究では、ハグビー®︎を抱きながら会話した場合と、電話だけで会話をした場合とで、離れた場所にいる見知らぬ相手に15分電話してもらいました。すると、ハグビーを使った方が電話だけよりもストレスを感じると分泌されるコルチゾールというホルモンの血中濃度が有意に下がることがわかりました(※3)。
オンライン帰省で抱き枕電話のすすめ
今年のゴールデンウィークは、オンライン帰省にしましょう、と政府もすすめています。そのときには、故郷のご家族や友達、そして、都会で暮らすお孫さんに、抱き枕電話を、ぜひやってみてください。電話なら、アプリなども不要ですから高齢の方でも大丈夫!ハグビー®︎でなくても、ご自宅にある、ぬいぐるみやクッションで十分です。顔に触れさせておくといいそうですよ。そうすると、離れた家族や友達のことを身近に感じることができ、脳からハッピーホルモンが出てちょっぴり幸せ気分が味わえるかもしれません。
オンラインセミナーで家族でタッチング
もしくは、お家にご家族がいるなら、まさにチャンスです。実際に触れ合ってオキシトシンを出しましょう。7秒ハグのCMもあったように、ほんのちょっと触れ合うだけでも十分です。そこで、私たちもこんな時だからこそ、何かお役に立てることがないかな?と思い、感染を予防しながら、ご家族で気軽にタッチができるオンラインセミナーを開催させていただこうかなと計画中です。ゴールデンウィークに開催しようと思っていますので、詳細が決まりましたらご案内させていただきますね。
※参考サイト
「新型コロナの今こそ!ハッピーホルモンで不安ストレス撃退!」NHKガッテン
「Daily Life and Coping」 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
「もしも距離を保つことを求められたなら」日本心理学会
「日本赤十字社新型コロナウイルス感染症に対する活動報告」日本赤十字社
「ギュっとコミュニケーション Hugvie 」 ハグビー公式サイト
「ハグビー HUG-10000」 京都西川公式サイト
※参考文献
(*1) Holmes, E.A., et al., : Multidisciplinary research priorities for the COVID-19 pandemic: a call for action for mental health science. The Lancet Psychiatry, 2020.
(*2) 江尻愛美, 河合恒, 藤原佳典, 他 : 都市高齢者における社会的孤立の予測要因:前向きコホート研究. 日本公衆衛生雑誌. 65(3):125-133. (2018).
(*3) Sumioka H, Nakase A, Kanai R, Ishiguro H, : Huggable communication medium decreases cortisol levels. Sci Rep,3:3034,2013
文:見谷 貴代